みなさん、こんにちは。 株式会社火燵です。
私(社長)は2024年で16年目の動画制作会社を経営しています。
動画制作はチームでの作業が基本で、お客様からの指示に基づいて制作を行います。 お客さんから指示をもらったら、ディレクターとして、若手スタッフに編集の指示を出し、またお客様の要望に応じて各担当者へ具体的な指示をします。
長く仕事をやっていると、お客様の指示が不明瞭で困ったり、若手にうまく伝わらず、求められた編集が実現できないことが稀にあります。多くの場合、このような課題は修正指示の不備によるものです。
この記事では、私が直面した経験から、避けるべき動画修正指示についてお話しします。主に修正指示を出す役割の人に向けて書きます。
1. 指示がアバウト
上司やクライアントからの修正指示が曖昧な場合、編集者はどのように対処すべきか迷うことがよくあります。20年動画制作をやっていても、変わりません。分かりにくい修正指示は、何年経っても分かりにくいです。
若手の編集者が「この指示が分からない」と質問することもあります。ベテランは相手の状況から推測して、意図を理解することができるかもしれません。しかし、アバウトな修正指示は基本的に内容の具体性まで想像することが難しいです。
指示がアバウトな人は、動画制作や修正指示の経験が少ないかもしれません。誰もが動画制作のプロではないので、この点は仕方のないことです。実際に言われて困ったものを挙げてみます。
「なんか映像が暗い」
これについては、アバウトな修正指示になってしまうのも仕方がないと思います。
修正指示を受けた編集者としては、現在の明るさを提示し、その後何%程度明るくできるかを提案すると良いでしょう。
例えば、暗い状態のスクリーンショットを提供し、それを明るく修正したスクリーンショットとの比較を行い、修正したことを伝えると、クライアントも理解しやすくなると思います。
「テイストを変えてほしい」
「テイストを変えてほしい」という指示だけでは、編集者から「どのようなテイストが望ましいですか?」という質問が来ることでしょう。このような指示を出す場合、変更したいテイストはあるが、具体的なイメージが浮かばないということが多いです。
この問題は、具体的な画像イメージを提供することで解決可能です。
編集者は望まれる雰囲気やスタイルについて確認し、適切な提案を行うべきです。指示を出す側も、YouTubeのサムネイル、Pinterest、Google画像検索などで見つけた好みの画像を編集者に送ると良いでしょう。
これにより、求めるテイストが明確になり、編集者も理解しやすくなります。修正指示を出す人も、受ける人も、互いに具体的なイメージを共有し、テイストを決めるためのコミュニケーションをとることが重要です。
「クオリティをもう少しあげたい」
「クオリティを上げてほしい」という指示は、特に若手編集者にとっては理解しづらく混乱を招くことがあります。このような場合、まずはクオリティが不足している具体的な部分を明確にする必要があります。
次に、クオリティをどの程度向上させたいのかを話し合います。クオリティ向上の対象は、テロップの配色やフォント、背景や画像デザイン、アニメーション、効果音やBGM、実写や写真の使用方法など多岐にわたります。どこを改善したいのか、具体的に指示してください。全体的なクオリティ向上が目標なら、理想の作品を示すことが最適です。
このような指示が必要になる背景には、共有されていないコンセプトやサンプル動画のイメージがあると考えられます。次回制作時は、事前にクオリティの基準をしっかり設定しましょう。
数値で指定できてない
テロップの修正指示でよくある「この文章を上に動かして」や「テロップを大きくして」といった要望は、具体的な数値で指定すると編集者の作業が格段に効率化します。
文章を移動する際は、「現在の文字サイズの何文字分か」、テロップのサイズを変更する場合は「現在のサイズから何%増やすか」など、具体的に指示できると作業がスムーズに進みます。
もし動画デザインのバランスを崩さないか心配なら、「数値指定の範囲内でデザインが崩れないよう調整してください」や「読みやすさを優先して最終的に調整してください」と付け加えれば、編集者がプロの目線で最適な調整を行います。
テロップは視聴者への情報伝達に欠かせない要素です。テロップのサイズや位置に迷ったら、修正前後のスクリーンショットを取ってクライアントに見せることをお勧めします。これは、特にテロップ修正が多い場合や動画の尺が長い時に、修正後の確認をクライアントと共に行うことで、より効率的な作業が可能です。
また、動画の尺の修正指示についても「最後のカットを2秒延長して」と具体的な数値で指示することが重要です。ここでも、「最終的には編集者の確認を経て調整してください」と補足することが望ましいです。
動画の長さを修正する指示が出る背景には、動画の展開速度が早すぎるか、遅すぎて間延びしているという印象があると考えられます。動画を視聴する際には、複数人での視聴を通して最適な長さを見極めることを推奨します。そして、その印象を編集者に伝えることで、より良い作品へと導くことができます。
主語と目的語が意味不明
指示を出す際には「冒頭のシーンを5秒短くしてください」といった形で、編集対象(主語)と実行内容(目的語)を明確にすることが重要です。「冒頭のシーン」が編集の対象で、「5秒短くする」が具体的な行動指示です。
こうすることで、指示がはっきりとし、誤解が生じるリスクを減らせます。さらに、冒頭のシーンが何カット目か、またはタイムコードでどの部分かを具体的に伝えることも有効です。
2. 時間を指定できてない
修正指示において、タイムコードを指定することも編集者の混乱を避けるための大切なポイントとなります。意識して修正指示を出してみてください。
不要部分は区間で指定する
「作業者が手を挙げている部分をカット」といった修正指示では、「手が挙がり始めてから完全に挙がるまで」か、「完全に挙がった状態から下がり始める瞬間まで」をカットするかが曖昧になりがちです。テキストだけの指示では、編集者も一瞬戸惑うことがあります。
動画のコンテキストや目指す完成形、クライアントの意図を理解すれば、多くの場合適切に対応できますが、時間の節約を考えれば、タイムコードで正確に区間を指定する(例: 0:10-0:24をカット)方が親切です。このように指示すれば、14秒間をカットすることが明確になります。カットする区間はタイムコードで具体的に指定しましょう。
さらに、カット編集作業は動画の終わりから順に行うことが推奨されます。開始点から作業を進めると、最終的にタイムコードが合わなくなります。特に編集初心者はこの点に注意してください。
タイムコードが間違えてる
修正指示が多くなると、タイムコードの誤記がよく起こります。例えば、10秒カットするべき場面のタイムコード指示が「00:10 – 00:12」と誤って記載されるケースです。これでは修正の意図が不明確で、作業が停滞する原因となります。修正指示を出す際は、内容が正確であることを再確認することが大切です。
3. 主観と客観が分かれてない
修正目線が自分目線
修正指示を出す際は、個人の主観ではなく、視聴者の視点に立った指示を心がけましょう。
たとえば、発注側の担当が50代男性であっても、視聴者が性別や年齢にわたって多様である場合、その担当者の好みだけで修正するのは、動画の効果に影響するため推奨できません。多様な視点を取り入れ、一人の意見に頼らない判断をすることが大切です。意見が分かれる場合は、主な視聴層を反映させた多数決が適切かもしれません。
また、視聴環境に応じて、パソコンで主に視聴されるならパソコンで、スマートフォンでの視聴が多いならスマートフォンで確認することが重要です。
まとめ
コミュニケーションが円滑になるように双方努力する
コミュニケーションの改善は、今まで指摘された課題を解決し、プロジェクトを円滑に進める鍵です。特に動画制作業界では、相手の性格や経験を考慮せずに自己中心的に説明することで、余計な工数が発生してしまう現状があります。
多くの動画制作者は報酬を受け取る側であり、発注が途絶えることを恐れ、不満があってもなかなか声に出せません。そのため、修正を指示する側も、ほんの少しでもいいので動画制作の基礎知識を学び、専門的な要望を理解することが、修正プロセスをスムーズにする鍵となります。これは結果的に企業の利益につながります。
動画編集のプロや制作チームも、専門用語を避け、誰にでも理解できるようなコミュニケーションを心がけるべきです。分かりやすい説明は、相手の態度を変え、プロジェクトを円滑に進めることに繋がります。
ただし、「あなたの指示やメールは理解しにくい」と直接言うと、不快感を与え、関係が悪化する恐れがあります。そのため、直接的な表現は避け、作業中や納品後に「コミュニケーションに問題はありませんでしたか?」「次回に向けて改善すべき点はありますか?」「互いに分かりにくい部分はありましたか?」といった方法でフィードバックを求めることが、良好な職場環境を作る上で効果的です。
私たちの会社では、顧客に納品後のコミュニケーションのクリアさや、次回の仕事をスムーズに進めるためのコミュニケーションの取り方について話し合うことで、双方の作業効率を高め、win-winの関係を築いています。