Frame.ioとは何か?
Frame.ioとは、動画のチェックに最適なAdobeのレビューツールです。Premiere ProやAfter Effectsで制作した動画を、依頼主(以下「お客様」)に確認してもらう際に利用すると、スムーズかつ安全に作業が進みます。Frame.ioは英語版なので、難しく見えるかもしれませんが、一度使ってしまえば迷うことなく確認作業が可能になります。
このブログを読んでいる皆さんは、動画を制作する側の方が多いと思います。現在、お客様への確認はどのように行っていますか?
YouTubeの限定公開機能などを使って見てもらい、タイムコードを記してもらいながらテキストによる修正指示をもらっていることが多いのでは……と思います。中にはお客様にスクショを撮ってもらって、手書きの指示をメールで送ってもらうような手間をかけている場合もあるかもしれません。
Frame.ioを使えば、お客様にも負担をかけず、制作側も修正漏れや指示の取り間違いなどのミスを防ぐことができます。また、限定公開の設定をミスして確認前の動画を公開してしまうという事故も未然に防げます。
このブログではFrame.ioの基本的な使い方と、私たちの経験則に基づいたFrame.ioを有効活用するためのポイントをお伝えします。なお、制作側はAdobe Premiere Proを利用していて、お客様はAdobeアカウントを持っておらず、パソコンのブラウザで確認をするという前提で話を進めます。
制作側でのFrame.ioの作業は3ステップ
Frame.ioの作業は
- プロジェクトの作成
- アップロード
- 動画の共有
という3ステップになります。
1.プロジェクトの作成
動画編集が終わり、お客様に確認してもらうシーケンスが完成したらPremiere Proの[ウィンドウ]メニューから[ワークスペース]→[レビュー]を選択して、[Frame.io]パネルを表示します。まずは、Frame.ioで確認してもらうための「プロジェクト」を作ります。
パネルの左上にあるボタンをクリックし、表示される画面の[Add Project]をクリックして、[New Project]という画面でプロジェクト名を入力したら[Create]ボタンをクリックします。
2.アップロード
次に、確認してもらうシーケンスをレンダリングしつつアップロードします。[Frame.io]パネルの[Upload]をクリックして、シーケンスを選択します。ここでは[Active Sequence]を選択して、現在表示されているシーケンスをアップロードします。
[Upload Sequence]という画面に切り替わると[Name]に現在のシーケンス名が表示されています。お客様に確認してもらう上で必要があれば名前を入力し直し、[Render to]でレンダリングした動画ファイルの保存場所を指定して、[Upload]ボタンをクリックします。その他の項目は特に変更する必要がありません。
なお、保存済みのシーケンスを選択する場合は、[Frame.io]パネルの[Upload]→[Files]を選択します。
※ここから別のプロジェクトを開くのではなく、単に保存、共有する目的となります。
3.動画の共有
最後に、アップロードしたシーケンスを動画としてお客様と共有します。[Frame.io]パネルでアップロードしたシーケンスを選択し、[]ボタンをクリックして、[Share for Review]を選択します。
URLが自動生成されるので、[Copy Link]をクリックしてコピーしたら、[Done]ボタンをクリックして画面を閉じます。
メールやチャットなど、普段からお客様とやり取りしている方法でコピーしたURLをペーストして送るだけです。
なお、パスワードを設定したり、シーケンスを動画としてダウンロードしてもらったりする場合は、[Share]ボタンをクリックして[Share as Presentation]を選択します。
お客様の作業は2ステップ
ここからは、お客様に「何をしてもらうか」を伝える内容になります。お客様の作業はいたって簡単。たったの2ステップです。
- メールアドレスと名前の入力
- コメント(修正内容)の入力
お客様はメールアドレスの入力はすることになりますが、Adobeアカウントを作ることにはなりません。ここでは修正コメントに返信がある場合などの通知目的のためにメールアドレスを入力します。
1.メールアドレスと名前の入力
お客様がメールやチャットで受け取ったURLをブラウザで開くと、共有した動画が表示され、ブラウザで確認作業をすることができます。画面下部に[Leave your comment here…]という入力欄があります。修正があった場合、ここにテキストでコメントを入力して[Send]ボタンをクリックするのですが、初めてFrame.ioを使う場合、[Want to leave a comment?]という画面が表示されます。
お客様は(お客様の)メールアドレスを入力し、[Continue]ボタンをクリック。
その後、下にもうひとつ入力欄が表示されるのでお客様の名前を入力。2つとも入力したら[I agree to the Terms and Conditions and our Privacy Policy.]にチェックを付け、再度[Continue]ボタンをクリックします。
英語の画面なので、お客様が戸惑わないように、あらかじめ[Want to leave a comment?]画面が表示されることを伝えておくといいでしょう。
2.コメント(修正内容)の入力
お客様は一度メールアドレスと名前を入力してしまえば、あとは修正したい位置にコメントを入力できます。そして、文字のコメント以外に「筆のアイコン」をクリックすることで、さまざまな入力ツールを表示し、画面上に手描きで指示を入れることができます。後述しますが、文字よりも直感的かつ具体的に指示が可能になるので、お客様には積極的に使ってもらうように伝えておきましょう。
お客様がコメントを入力して[Send]ボタンをクリックすると、制作側のAdobeアカウントを登録しているメールアドレスに「Frame.io」からメールが届きます。また、そのメールを待たずともPremiere Proの[Frame.io]パネルには、リアルタイムでコメントが表示されます。制作側は、そのコメントを見ながら修正するという流れになります。
なお、コメントは範囲指定も可能です。[Send]ボタンをクリックする前に【●】と表示されている左右の【 】をドラッグすることで、コメントの開始位置と終了位置を指定できます。
制作側のFrame.ioを使った修正作業
制作側はPremiere Proの[Frame.io]パネルでお客様のコメントをクリックすると、修正内容が表示されると同時に再生ヘッドがコメントの位置に移動します。タイムコードを元に位置を探さなくてもいいので、とても便利な機能です。範囲指定したコメントの場合は、開始点に再生ヘッドが移動します。
タイムコードを元にカット編集する場合、後ろからカットすることが鉄則です。Frame.ioでは再生ヘッドが移動するので影響は少ないのですが、お客様がコメントにタイムコードを記した場合などは正確を期すために後ろからカットしましょう。
コメントの指示に従って修正したら、コメントの右端の○印(Mark complete)にチェックを付けます。修正内容に不明点がある場合など、何かしらのコメントを残したい場合はコメント下の[Reply]をクリックし、制作側のコメントを入力します。
すべてのコメントへの対応が完了したらシーケンスを保存し、[Frame.io]パネルの[Upload]→[Active Sequence]を選択し、シーケンス名を変更せずに初回と同じ手順でアップロードします。すると、[Frame.io]パネルのシーケンスアイコンの右上に「2」という数字が表示されます。これは2つのバージョンがあるという印になります。なお、[Frame.io]パネルをリスト表示にしている場合は、シーケンス名の下に「Version 2」と表示されます。
ここまでできたら、お客様に修正した旨を伝えます。最初と同じ手順でURLを伝えてもいいのですが、お客様がブラウザを開いた状態であればブラウザをリロードしてもらうだけで修正内容が更新されます。
なお、 iOSならばFrame.ioのアプリが用意されており、制作側はお客様がコメントを入れたことを通知によって把握することができます。お互いメールを送る必要がなく、運が良ければ作業者と編集者で時間を同期することも可能なので修正指示に対してリアルタイムに質問することも可能です。
Frame.io
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お客様のFrame.ioを使った修正確認作業
お客様は新たに届いたURLを開くか、ブラウザをリロードすると、シーケンス名の右に[v2]のようにバージョン名が表示されます。ここで修正前と修正後の動画を切り替えて表示できます。また、シーケンス名の左にある[Compare versions]ボタンをクリックすると、2つのバージョンを左右に並べて表示することも可能です。
この並べて表示した状態では、タイムコードの右にある 音声マークをクリックすることで、どちらのバージョンの音声を再生するかを選択できます。BGMの音量やSEの種類など、音声に関する修正があった場合に確認してもらえる便利な機能です。
確認作業が完了するまで、この作業を繰り返すという流れになります。修正バージョンを追加した場合など、タイミングによって[Want to leave a comment?]画面でメールアドレスを再度要求される場合があります。そのことも注意点として、あらかじめ伝えておいた方がいいかもしれません。また、お客様の環境(OSやブラウザ)によって、うまくコメントが入力できない場合は、ブラウザを変更してもらいましょう。
いずれにせよ、本番の動画確認作業の前に短い動画をFrame.ioでお客様に共有してもらい、下記に挙げるようなコメントのルールを話し合っておくことが、スムーズな確認作業に繋がると思います。
火燵おすすめの確認作業のルール
1コメント=1修正
修正完了のボタンがあるので1つのコメントにまとめましょう。コメントごとに完了確認の○印(Mark complete)機能が付いています。ここにチェックを付けると、修正漏れがなくなるのはもちろんですが、お客様にもチェックしたことがリアルタイムに伝わります。
お客様のFrame.ioの画面右側、コメントの右上に[Hide]と表示されています。
ここをクリックするとチェックが付いたコメントが非表示になります。
この機能を伝えておけば、お客様が進捗状況をリアルタイムで知ることができます。「まだですか?」「いつ上がりますか?」と煽られると制作側は落ち着きませんし、お客様もストレスが溜まりますが、この機能を使うことでお互い落ち着いて作業を進めることができます。
なお、[Hide]をクリックした後に表示される[Show]をクリックすると、すべてのコメントを再度表示させることができます。
指示内容をパターン化
動画全体に関する修正の場合は、例えば「#動画全体」というハッシュタグを付けるか、タイムコードを「0:00」と表示して、指示内容をパターン化するとお客様も制作側も作業しやすくなります。
「明るさを上げる・下げる」「ノイズをもう少しクリアに」「音量を上げる・下げる」などは、動画全体に関わる修正指示として挙げられます。その際に「#動画全体」「#音声全体」などのハッシュタグを付けた上でコメントを入力してもらうといいでしょう。
文字だけでなく手描き機能を活用
文字だけのコメントではなく、該当箇所を囲んでコメントすることをおすすめします。普段から使っている言葉は人それぞれ違います。同じ言葉でも感じ方が変わることがあります。そして、画面のどのあたりを修正したいのかを文字だけで表そうとすると、かなりの文字数になってしまい、それを理解して該当箇所を探すのにも時間がかかります。なので、積極的に画面への書き込みツールを使うようにしましょう。
また、テキスト量を減らすことで、指示が明確になり、理解がスムーズになります。そして、ブログの他の記事「動画編集者を困らせないために、避けるべき修正指示とは?」でも書きましたが、できる限り数値で指示してもらうようにします。例えば、テロップの位置を移動する際は「現在の文字サイズの何文字分か」、テロップのサイズを変更する場合は「現在のサイズから何%大きくするか・小さくするか」など、お客様から具体的な指示をもらえるように事前に打ち合わせをしておきましょう。
「いいね」の活用
Frame.ioのコメントには「いいね」ボタンがあります。使い方は、SNSで使われている「いいね」と同じではなく、複数の人で確認作業をする場合、他の人の意見を聞いてみたいときに「私はこのように思いますが、皆さんどう思いますか?」のように使うと良いでしょう。例えば8人が確認作業に関わり、そのうち6人が修正内容について「いいね」ならば、6人が修正したいと考えているので、多数決の原理で「修正しよう」となります。
ただ、デザインに関しては賛成が多いから修正が成立することが一般企業ではよくありますが、多数決よりもプロの意見を含めた方がいいシーンもありますので、そこはバランスを考えて「いいね」の数を考えるべきだと思います。
話し合い(反省)
修正方法や修正手順などは、チェックシートを作ってから行いましょう。集中力が欠けた場合であっても、チェックの仕組みがあれば解決することができます。しかし、それでも修正漏れや指示忘れが発生した時は、お互い話し合って、どのような指示の受け方、どのような指示の出し方がやりやすいのか、ということを双方から聞いて、お互いがFrame.ioを使いやすい環境を作っていきましょう。